痛々しくて痛い
「げ、元気だったよ。綿貫と一緒に働いてるって言ったら、すっげーびっくりしてた」

「あ、そうですよね。びっくりしますよね。私自身、未だに信じられないし」

「いや、綿貫はいい加減自覚しろよ」


ひとまずそのボケに突っ込んでおいてから話を続けた。


「…会えなくて寂しいけど、これからも、お仕事頑張ってね、だってさ」

「う、うんっ」


それまでちょっと不安げな様子だった綿貫だが、その言葉を聞いた途端にパァ~っと晴れやかな表情になり、心底嬉しそうな声音でそう言いながら、コックリと頷いた。


「だだいまー」


するとそこで、颯さんが賑やかに戻って来た。


「他の部署の茶器当番の人と話し込んじゃったよー!まずーい!早くコーヒー作らないと伊織さんに怒られるー!」


相変わらずのてんやわんやっぷりだ。


普段だったら何かしら励ましの言葉をかける俺なのだが、今日はどうもそんな気分になれない。


というか、アタフタと動く颯さんを目で追いながら、またもや楽しげに「ウフフ」と笑う綿貫を見ていると、胸がズキズキと痛んでそれどころじゃなかった。


嘘をついてしまった罪悪感と、自分に悪意を向けられている事など露知らず、無邪気に微笑む綿貫を憐れむ気持ちとがまぜこぜになった、何とも表現し難い嫌な感情。
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