痛々しくて痛い
「いや、世の中には『特技を持ってる人の事は使わにゃ損損』とばかりに、相手の都合なんかお構いなしに図々しいお願いをしかも無償前提でするような輩もいるみたいだからさ。でも、愛実の周りにはそういう考えの人は皆無だったって訳だ」

「はい。それに、私自身が楽しんで作っていたので、それが負担になるという事もなかったです」

「そっか。ごめんね?下世話な心配しちゃって」

「それはたまたま運が良かったってだけだろ。伊織さんの懸念通り、要求がエスカレートする危険性だってあったんだぞ」


私と伊織さんの間ではめでたしめでたし、で終わる所だったのだけれど、麻宮君は依然として険しい表情で話を続けた。


「これからも油断はしないように。安請け合いして余計な負担を背負い込んだりするなよ」

「え…。う、うん…」


一瞬、その場が静寂に包まれる。


「…何だか慧人、愛実ちゃんのお父さんみたい」


すると颯さんがポツリと呟いた。


「ほんとだよね。実際は一年近く年下なのに」

「年頃の娘に門限を言い渡す頑固親父並みに威圧感があったよな」


伊織さん、染谷さんも後に続き、微妙な空気が途端に和らいだ。


「でも、ちょっと熱くなりすぎだよね」

「そうだよな。本人が納得ずくでやってた事で、別にトラブルもなかったっていうんだから、もう良いじゃないか」
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