痛々しくて痛い
「何が友達だよ。相手が異動したばかりで大変な時に、そんな図々しい注文を押し付けて。費用を出す約束だって、最終的にはバックレるつもりかもしれないぞ」


その言い草に、私の中の何かが一気に冷えた。


そんな…。

人形を作る事は前々から決まってて、たまたまそれと異動のタイミングが重なってしまっただけで…。


それに優子ちゃんはその名の通り、とても優しく思慮深く、聡明な人で、いつも私を気遣い、今まで色々なものから守って来てくれた。


私にとってかけがえのない大切な仲間を、そんな勝手な想像と思い込みで否定するなんて…。


麻宮君がそんな考え方をするような人だったなんて…。


体の中心はすごく冷え切っているのに、目頭だけが異常に熱くなって来る。


「やめて」


そのエネルギーが、私の瞳から涙を一粒、ポトリと押し出した。


それを見た麻宮君は、ギョッとしたような表情になる。


「私は何を言われても良いけど、お友達を侮辱するような、そんな悲しい事、言わないで」


職場で、しかも思いっきりプライベートな事で感情を乱し、涙を流すなんて、めちゃくちゃ恥ずかしいし情けない。


でも、これだけは言っておきたかった。


視線を上げて、麻宮君を真っ直ぐに見つめ返し、言葉をぶつける。


「麻宮君にそんなこと、言われるスジアイ、ない」


私の体だけでなく、その場の空気が一気に凍りつくのが感じられた。
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