痛々しくて痛い
「久しぶりに再会したその女子が、手芸の得意な綿貫を、高校時代に散々利用した事を自慢気に暴露したあげく、いまだにバカにしている事が窺える発言をしていて…」

「なるほどね」


伊織さんは心底納得したように頷いた。


「そんな矢先にああいった話題が出たものだから、愛実にあれこれ意見せずにはいられなかったって訳か」

「はい…」

「そんな胸くそ悪い話を聞いてしまったら、確かに平常心でいるのは中々難しいよね。でも…」


一旦言葉を切ってから、伊織さんはズバッと指摘する。


「気持ちは分かるんだけど、言葉のチョイスや段取りを、これでもかとばかりに間違えまくってたよね」

「うん。一人で空回りしてるっていうか、慧人らしからぬ取り乱しっぷりだったと思う」


颯さんにまで冷静に言い放たれて、俺は内心『うっ』と思った。


「それに…。一生涯、あらゆる負の感情から一人の人間を守りきるってのは、実際問題不可能だと思うんだよな。だったらむしろ、多少はそういった経験をしてもらって、対処法を学んでもらうっていうのも、一つの手なんじゃないのかな」


樹さんも穏やかな口調で会話に加わる。


「世の中には、こんなに自分勝手で汚くて醜い考え方をする奴がいるんだ、っていう事実を、身を持って知る事も必要な経験だと思うんだよ」

「反対に言えば、相手がそういう奴だと分かれば、遠慮なく躊躇なくバッサリと縁を切れるし」
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