痛々しくて痛い

ケイト



綿貫は一度も俺と目を合わさずに出て行ってしまった。


もうダメだ…。


仕事中は何とか踏ん張っていたけれど、気持ちが退社モードになり、綿貫の姿が見えなくなった途端、最大級の疲労感と脱力感が襲って来て、思わず椅子の背もたれにぐったりと体を預けてしまった。


とてもじゃないけどすぐには立ち上がれそうにない。


「さて…」


すると、てっきりすぐに動き出すと思っていた3人が、同じく席に着いたままで、それどころか樹さんが、まるでこれからミーティングを開始するかのようなトーンで言葉を発した。


「俺達に対して何か言い訳しておきたい事や、吐き出したい愚痴なんかがあるんじゃないのか?慧人」


「……え?」


「即解決には至らないかもしれないけど、話だけは聞くよ」

「ただ口にするだけで気分が晴れる場合もあるしね」


颯さんと伊織さんも後に続く。


「っていうか、あの日私が愛実に余計な質問をした時から、何だか様子がおかしくなったよね?ズバリ、その事と関係があるんじゃないの?」


そして伊織さんは更に言葉を繋ぐ。


「あ、いや…」


迷ったのはほんの一瞬だった。


「…実は最近、高校時代のクラスメートと会う機会があって…」


俺は皆さんにすがるように、自然とそのエピソードを語り始めていた。


「それで当然のごとく、学生の頃の話題になったんですが…」

「うん」
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