痛々しくて痛い
就業中だけでなく、昼休みや休憩時間にも男女問わず、常に麻宮君の周りには人だかりが出来ていたので、私が挨拶以外で彼と接する事はほとんどなかった。


その人波をかき分けてまで麻宮君に接近し、話しかけなくちゃいけないような事柄もなかったし、席が離れていたから実践のグループ分けでも一緒になる事はなかった。


だから賑やかで楽しそうな『チーム麻宮』を微笑ましく眺めつつ、私は私で懇親会にて仲良くなれた江川さん加藤さんと共に、ほのぼのとした気分でお昼やお茶休憩を過ごしていた。


麻宮君とそんな距離感を保ったままあっという間に数週間が過ぎ、研修も残りわずかとなったある日の昼休み。


「ねーねー綿貫さん。今、ちょっと良いかな?」


化粧室の洗面台で歯を磨き終え、部屋に戻ろうとしたその時、同期の渡辺さんから声をかけられた。


申し訳ないけれど、かなりびっくり仰天してしまった。


渡辺さんはクラスに必ず一定数はいる、明るくてはっきりきっぱりしていてなおかつおシャレで、いわゆる『リア充』と形容されるような人。


一緒に行動している山本さんと高橋さんも同じタイプで、麻宮君を取り囲む輪の中でも中心人物だった。


そんな人に、いきなりフレンドリーに話しかけられたものだからとにかく驚いてしまって。


同期にいつどんなタイミングで話しかけられようと別に不思議な事ではないんだけど…。
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