あなたと月を見られたら。
私は基本的に家のご飯が好き。豪華じゃなくても質素でもお母さんが一生懸命家族のために作ってくれたご飯が好きなんだ。
《家庭料理は目の前にいる大切な人たちのためだけに作るから美味しいの。》
そう言って嬉しそうに楽しそうに料理を作る母が好きだったから…私は昔から外食に縁がない。(もちろんランチは食べるよ?!でもディナーは基本的には家で食べるのが好きなんだよねぇ。)
だから龍聖と食べてたホテルディナーはカチンコチンに緊張しながら食べてたんだ。
バカだったなぁ、私。
素直に「苦手」って言えばよかったのに、我慢しちゃって。
今ならそうは思えるけど、あの時は言えなかったんだよね。龍聖に嫌われたくなくて。めんどくさいオンナって思われたくなくって。
今以上に世間知らずのお嬢さんだった自分を思い出してクスッと笑うと
「逆に言えば俺は基本、外食しかしたことなかったからなぁ…。正直カノジョが作る手料理とか気持ち悪かったよ。なんか変なモノが入ってそうで。」
ホッコリした気持ちを打ち消すかのように、涼しい顔して最低な発言を龍聖はし始める。
はぁ?!なに言ってるの、この人!
「変なモノってなによ。」
「え?変なモノって変なモノだよ。正直手料理って時間と手間かける割にはあんまり美味くないし。外に食べに行った方が後片付けも簡単だし、美味いし、言うことなしじゃん。」