あなたと月を見られたら。

こ、こいつ身も蓋もないことを…。


そうだけど!確かに外食に行った方がいろんな意味で楽なんだけど、そうじゃないじゃん!!


悪魔で最低な発言に悲しくなるやらイライラ来るやら、複雑な気持ちでいると


「正直友達の母親が素手で握ったオニギリとか気持ち悪くて食えないし、自分のテリトリーで我が物顔して料理なんてされたら、たまったもんじゃないよね。何様?って感じ。鬱陶しい。」


龍聖はこんな爆弾を吐き出し始める。



なぬー!!?
なんてこと言うのよ!!
やっぱりこの人、性格悪い!


プンプン怒りながら「あのねぇ!」と反論しようとすると


「でも…自分が作る側に回ると、自分の作ったもので美味しいって言ってくれたら嬉しいし、笑顔になってくれたらそれだけで幸せになれる。バカだよね?そんな単純な幸せすら知らなかった自分はガキだったなぁ、って心底思うよ。」


ハハッと笑いながらそんなことをサラッと言っちゃうから、行き場をなくした声がググッと喉の奥に引っ込む。


白ワインを喉の奥に流し込みながら、過去の自分と今の自分を語る龍聖。行き場をなくした言葉が喉の奥に引っ込んで、どうしたらいいのか対処に困っていると


「アレ?怒らないの??」


龍聖は不思議そうな顔をして私の顔を覗き込む。


全く。この人は怒られるのがわかっててこんなコトを言い出したんだろうか。不良な悪魔は相変わらず思考回路が意味不明だ。



「いや…怒ろうとは思ってたんだけど…いろいろ思うところがあって怒れなくなりました。」


素直に今の気持ちを吐き出すと龍聖はアハハ!と大きな声で笑って


「美月はお人好しだよね。
そんなんじゃ悪い男に騙されるよ?」


どこかで聞いたセリフを吐き出し始めた。

< 123 / 223 >

この作品をシェア

pagetop