あなたと月を見られたら。
「誰が何と言おうとコーヒー1杯で人を幸せにできる龍聖は素敵です。この仕事に誇りを持って自分らしく生きている龍聖は素敵です。あなたみたいな人に…彼を侮辱されて黙っているわけにはいきません!!」
窮鼠ネコを噛む。
弱虫だってねぇ!追い詰められたらヘビだって噛んじゃうんだから!!
私はお腹の底から腹を立てていた。
ライバルが現れたから?
自分の立場が逆転しそうだから?
そんなことはどうだっていの!私はね?大好きな人が侮辱されてるのを見て平気でなんていられない性分なんだ。
それにさ?
この人だって龍聖の事…好きなんだよね?
普通は好きなら、ありのままの彼を受け入れるものだと思うの。なのに彼女は自分勝手な自分よがりな価値観を龍聖に何くわぬ顔してぶつけるから……我慢ならなくなったんだ。
女と女の睨み合い。バチバチと火花の飛ぶ、ヘビ女と弱虫女の熾烈なガンの飛ばし合い。
普通の男の人なら尻尾巻いて逃げ出す状況だと思うんだけど…。龍聖はカウンターの中から私の背後へテクテク歩いて、私を背中からギュッと抱きしめると
「…ってことだから…諦めて帰ってくれないかな、塔子さん。」
ニッコリと笑って彼はヘビ女に、そう告げる。
背中に感じる熱い体温。彼の体温と懐かしいコーヒーの香りに包まれて、不覚にもホッと胸を撫で下ろしていると
「龍聖!!あなた私とその女とどっちが大事なのよ!!」
今まで以上にすごい顔して、美女は龍聖にグワッと詰め寄る。