あなたと月を見られたら。
その形相に驚いて一瞬ビクリと身を震わせると、龍聖はハァーと大きくため息を吐いて
「いや…、それを言うのは卑怯でしょう。」
そんな言葉を口にした。
ーーえ、ええ?!!
ちょ、ちょっと!!そこはきっぱり「美月だ!」って言ってよ!!!
龍聖に心の中で盛大な非難の声を浴びせていると
「ふざけないでよ!アンタをこ〜んないい男に育て上げたのは、他でもない。この私なのよ?!!」
美女は鼻息荒く怒り始める。
うーん。怒っているのは、どうも私だけではないらしい。でもさ??その言い草が何とも言えずカンに触って気に入らない。
「あのねぇ!」
その美女の勢いに負けじと言い返そうとすると、龍聖は私の口を右手でキュッと覆って
「あのさー、よく考えてよ。自分の母親とカノジョと、比べる場所が違うし比べる対象でもないでしょ?そこんとこ混同しないでくれるかな、塔子さん。」
え、
え、
ええ???
今…この人何て言った…????
母親??
母親とカノジョって言ったよね、この人!!
カノジョは間違いなく、私、牧村美月。じゃあ母親って……
「う、うそ……」
信じられない!目の前にいるこの人が龍聖のその人だとは全くもって信じられない!!
だけど、、、怖いもの見たさでゆるーりと彼女の方へ目線をやると
「やめてよ!母親だなんてオバさんくさいこと言わないで!!」
「あのさ?塔子さん、今、自分をいくつだと思ってんの?52だよ、52。オバさんどころかおばあさんだから。」
「イヤーーっ!!
なんてこと言うのよ!!
相変わらずイヤミで可愛くないわね、龍聖!!優ちゃんはあんなに可愛く育ってるのに!!」
私を抱きしめて間に入れたまんま、龍聖と美女は醜く、しょーもない争いを繰り広げている。