あなたと月を見られたら。

鈍感な美月は何も知らずに「高価なグラスは怖い」とか「どこからこんなの買うお金が出たの?」とかノーテンキな質問を俺に繰り返してたけど……。


その日の夜。
焼肉食べる!と息巻いていた優聖を追い返して、美月といつもみたいに俺の部屋で愛し合って、じゃれあって。俺の腕の中でスゥスゥと安らかな寝息を立てる美月を横目にしながら


『なぁ、優聖。美月が好きなら、見てるだけじゃなくて告白すれば?』


優聖にメールを送った。


しばらくした後

『なーに言ってんの!牧村さんのことなんて全然好きじゃないよー!龍聖、勘ぐりすぎ!無駄に嫉妬深いわー!!』

なんだか無駄に元気な返信が優聖から帰ってきた。



__馬鹿なヤツ。




俺に気を使ってるのか、それとも自分の気持ちに気付かないふりをしたいのか……。どっちにしたって、それがどんなに苦しいことかは俺がよく知っている。


出口のない片思いなんて苦しいだけで建設的じゃない。


見てるだけで幸せ!とかよく言うけど……それって自分も周りも騙す、壮大な嘘だと思う。だって頑張ったら頑張った分、見つめたら見つめた分、その見返りを求めるのが人間だから。


片思いなんて長くすればするほど、歪んで、こじれて余計わけが悪くなるだけだ。精神衛生上だってよろしくない。


でも……
俺があいつの肩持つのも変な話だしなぁ。


美月を譲ることなんて絶対にできないし、今更この手を離すことなんて絶対にできない。美月以上に大切な人なんて、俺には世界中どこを探したっていないのだから。

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