あなたと月を見られたら。
そんなことを思いながら、デスクワークをこなしていると、机の上に置いてあった仕事用の携帯がtrrr…と鳴り始める。
慌てて画面を見ると、そこに出てきた名前は『白石玲子』。急いで通話ボタンを押すと
「もしもし、美月ちゃん?
申し訳ないんだけどね?今から言う資料が、欲しいんだけど用立ててもらってもいい??」
「あ、はい!」
玲子先生からこんな依頼を受けた。
編集のお仕事は多岐に渡る。
校正のお手伝いをするのももちろんお仕事。ついでに言えば作品をどう売るかを考えてプロデュースすることもお仕事。それに…作家の先生が気持ちよくお仕事できるようにサポートするのも大切なお仕事の一つなのだ。
玲子先生が指定した資料をメモして、電話を切って
「すみません、ちょっと出てきます。」
カバンを手にとって席を立つと
「頑張って!」
我が部署のアイドル、麻生さんはにっこり笑って私の背中をポンと叩いた。
うん。やっぱり麻生さんは優しくて、いい人だ。
「行ってきます。」
「うん。あとは任せてー!」
優しくて柔らかい、麻生さんの声を聞きながら私はオフィスを後にした。