あなたと月を見られたら。
玲子先生に頼まれた資料はフランスのカフェの本。メニューや外観、それに内観なんかの写真が多数写されている写真集。それに外国のカフェスウィーツを集めたレシピ集。美味しいコーヒーの淹れ方と豆や焙煎に関する本だった。
頼まれた資料は調べてみると、どれも洋書で普通の本屋さんには売っていない。
「しょうがない…。確か青山に洋書専門の本屋さんがあったから、出かけてみようかな。」
そう決めて、地下鉄を乗り継いで青山一丁目駅を目指す。
カフェ、それにコーヒー。それにこの資料の品揃えを見ると…先生がイメージしてる今回の作品のヒーローってアイツなのかもしれない。
頭の隅にあるのは、そんな恐ろしいこと。恋愛から遠ざかってる、こじらせ女子の話とは言ってたけど…カフェとこじらせ女子か。どんな話になることやら…。
そんなことを考えていたらアッと言う間に電車は青山についてしまって、私はウロウロとあたりを見回しながら細い路地へと入っていった。
ここから目と鼻の先にある原宿は、10代のオシャレ女子にオシャレ男子の聖地だけれど、ここ青山は大人の街。有名なジャズバーにオシャレなカフェ。そんな大人な街を歩いてると自分もいい女に勝手に出世したみたいで気持ちいい。