あなたと月を見られたら。


「女の人を性欲処理の道具みたいに思ってたところもあったし、俺は俺だけのことを考えたいのに俺の自由を阻んで、俺を束縛しだす存在はウザいって…正直そう思ってた。」


その言葉に2年前の私がチクンと傷つく。龍聖のことが大好きで、好きだからこそ我慢して、自分らしさを失ってでも付き合っていたかった、あの頃の私が首をもたげる。


「そう…。」


それ以上言えなかった。私だって馬鹿じゃない。馬鹿じゃないからこそわかる。私は龍聖に"そう思われてた"んだ。


性欲処理の道具、そして自分の自由を阻むウザい存在だった、と思われてたんだ。

龍聖と繋がれた手が冷たく冷えていく。絡んだ指先が、やけに淋しい。


何も言わない私をチラリと見た後


「ごめんね、美月。」


それだけをつぶやいた。



ひどい男。
本当に龍聖はひどい男だ。
今更そんな風に懺悔して、自己満足に酔いしれて、また自分勝手に自分を貫き通す気??


自分はいいよね、それでスッキリするよね。謝ったんだもん、スッキリしたよね。でもさ?私はどうなの??


そんなこと言われて、こんなことされて、正気でいられると思う??私にゴメンと思うなら、悪いと思うならあのまま放っておいて欲しかった。他人行儀を貫き通したあの時みたいに、ずっと知らんぷりしてくれればよかったのに。


キライ…大っ嫌い。


こんな風に自分の気持ち一つで人を振り回す龍聖も、龍聖の何気ない言葉にいちいち傷ついちゃう自分も情けなくてヘドが出る。


優しくない。
やっぱり龍聖には愛がない。


< 40 / 223 >

この作品をシェア

pagetop