あなたと月を見られたら。


そんな…そんなバカな…。


信じられない気持ちで龍聖に目線を移すと

「マジメな美月チャンには信じられないかもしれないけどね。俺の母親の尻軽さは病気レベルだったんだよ。オヤジと結婚してるくせにカラダだけ関係のある男がわんさかいた。そこにいる優聖はれっきとした父親の息子。だけど俺はね??心当たりがありすぎて誰が父親なんだかワケわかんないんだってさ。」

龍聖は笑いながら、さらに救いのない言葉を口にする。大した問題じゃない、とでも言うようにアッサリと何事もなく言葉を紡ぐ龍聖に絶句する。



「ま、でも龍聖の父親は凄い奴に違いない、と俺は思うよ??」

「はぁ?なんで??」

「そのルックス、その頭脳は、中途半端な男からじゃ引き継げないよー。それにホラ、塔子さんっていい男じゃないと相手にしなさそうじゃん。」

「バカか、優聖。アイツは男だったら多分誰でもいいんだよ。そんなこと言われてもちっとも嬉しくないっつーの。」

「えー?!そうかなぁ。」



こんな重い問題を笑いながら軽く言い合ってる麻生さんと龍聖を見ると、余計に重たい気持ちにさせられる。


龍聖に愛がない理由、思いやりのない理由、優しくない理由。そしてあの寂しそうな瞳の理由も全て、ここにあるんじゃないのかな。


そう確信させられた。


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