あなたと月を見られたら。
は、はじめまして…だとぉ??
コイツ…私のコト忘れてるんじゃないでしょうね…。
まるで本当に初めて会った人かのように、営業用の作り笑顔を向ける佐伯龍聖。そんな龍聖にイラついて怪訝な顔を向ける私。
そんな私を見て玲子先生は
「あら〜ぁ。なぁに?美月ちゃん。美月ちゃんもマスターのこと気に入っちゃったのぉ?」
だなんて恐ろしいことを言い始める。
はぁーっ?!
バカなこと言わないでよ!
こーんな男、気にいるはずがないでしょーがっ!
「ばっ、バカなこと言わないでください!私、イケメンには興味ないっていつも言ってるじゃないですかっ!」
「えー?そうは言ってもイケメンって見るだけで幸せじゃない。目の保養っていうの?イケメン、いいじゃない〜」
「先生!見るぶんにはいいのかもしれないですけど、私は興味がないんです!普通の人!普通の人がいいんですっ!」
そうよ!
私はねぇっ!愛のない男なんてお断り!顔だけ良くても愛がなきゃ意味がないんだからっ!
それをコイツで学んだのよ!私はっ!
鼻息荒く、そう答えると
「あ〜ぁ。ほんと…美月ちゃんはそういうとこが残念よねぇ。イケメンは生きる活力なのになぁ。人生絶対損してるわぁ…。」
ため息を吐きながら玲子先生は窓際の席へとテクテクと歩いていく。そんな玲子先生を見てクスリと笑うと
「後でメニューをお持ちいたしますね、玲子さん。」
龍聖は玲子先生に声をかけた後、またまたあの嘘くさい笑顔を浮かべてニッコリと私に微笑んだのだった。