砂漠の賢者 The Best BondS-3
「……でも、じゃあ、どうすれば……」
自分で思うよりも脳は錯乱していて、思考がうまくまとまらない。
歯軋りをするエナの背中をゼルが思いっきり叩いた。
「考えるより先に、動きゃあいいんだよ!お前の十八番だろーが!」
「ジストさんの情報収集能力も、バカゼルの腕っぷしも、あんまりナメないで欲しいな」
叩かれた背中の痛さにその場で蹲(ウズクマ)ってしまったエナは顔だけを上げた。
そこには笑顔を浮かべて見下ろす二人の姿が。
その顔を見て、憑き物が落ちたようにエナは肩の力を抜いて、ふっ、と笑った。
「あんたらが頼りにならないから困ってるんでしょ」
「てめェ……何だよ、さっきまでオタオタしてやがったくせに」
自身への怒りは尚も胸中に溢れている。
だが、喚いたところで事態は何の変化も見せてくれないのは確かな事実だから。
この余裕ぶった二人の笑顔に騙されてやることにする。
「そんなあたしを見てオタオタしてたのは何処のバカよ?」
「ははっ。元気になったみたいだね、エナちゃん」
弾むような声でジストが笑う。相変わらず嘘臭い笑い方だとエナは思うわけだが。
「いや、コイツはさっきからずっと元気だろ。ギャーギャー喚き立てやがって」
それでも安堵した声音を混ぜるゼルに、思いの他心配させていたのだとエナは悟る。
エナは立ち上がり、二人の肩をぽんと叩いた。
「………頼りにするからね」
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