砂漠の賢者 The Best BondS-3



「エナちゃんてさー、言い方アレだけど、根底が正論なんだよねー」


ジストが遠巻きで楽しそうに笑った。


「ちょっとでも非がありゃ、エナには勝てねぇってこったな」

にしても、非の棚上げはエナも十八番だと思わねェか? とゼルが眉を顰めた。


「だ……黙れェェっ!」


男が遂に手を振り上げた。


エナの眉がぴくりと動いた。

だが、それだけだ。

エナは微動だにしない。

ごく一般的なスピード。

力も一般的だろう。


ならば、一発くらい殴られたところで大事には至るまい。


そう悟ったのと、後は。

エナは知っているから。

彼らが黙ってみているわけがないことを。


「はぁい、そこまで」


語尾にハートを散りばめた声がエナのすぐ背後から聞こえる。

エナの肩越しから伸びた腕が男の拳を掴んでいた。

そして。


「男の拳はそんな簡単に挙げるモンじゃねンだよ」


いつの間にか鞘から抜かれた剣の切っ先が男の喉元に当てられていて、思わずエナは苦笑した。


「剣こそ、そんな簡単に抜くモンかな」

「っせェな。オレぁ男のコケンの話をしてンだよ」


固まったまま動けずに居る男にエナは腕の中のラファエルを近づけた。


「自分より弱い者に手を挙げるその見下げた根性に、引導よ」


ラファエルが、嫌がり身を捩りながら、にゃあと鳴く。


「な、んだ、その生き物…?!」

「見てわかんない? 犬よ。立派な。…はい、おしおき」


言いながら男の身につけていたターバンに、ラファエルの肉球をぎゅう、と押し当てた。

硬直している男にはきっと、これが何のお仕置きなのかわからなかったに違いない。


鏡を前にした時初めてターバンにくっきりとつけられた墨の肉球に気付くだろう。





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