砂漠の賢者 The Best BondS-3
「ジスト、ゼル。荷物は?」
「手配済み。エナちゃんの旦那の地位を狙うんだから、これくらい出来ないとね。えらい? 褒めて褒めて」
「エナがこんな大道芸やってる間にな」
ゼルが剣を鞘に収め、ジストも男の拳を離した。
まだ言葉が出ずに居る男に背中を向け、三人は何事もなかったかのように会話を楽しむ。
「もっと早くしゃしゃり出て来いっての。怖かったじゃん」
一人でも勝つつもりくらいあったのだろうが、エナはそんなことを口にした。
「はいはい、痛かったでちゅねー。舐めてあげようか? 消毒消毒」
ジストがエナの肩を擦った。
「あんなヤツいちいち相手にしてんじゃねェよ」
エナはラファエルの足を拭きながら不満げに鼻を鳴らす。
「見て見ぬ振りは人類の悪い癖よ。あー、怒鳴ったらお腹空いたー」
「あ、ジストさん、美味しいお店知ってるよ」
自らを指差して自己申告するジストにエナはちらりと目を遣り、手をひらひらと振った。
「駄目駄目、あんたの知ってる店、高級過ぎ。お金幾らあっても足んないわ」
「そりゃエナが食いすぎんだろーがよ」
「ゼル、あんたが言うな!」
和気藹々。
そんな言葉が似合う会話を三人は繰り広げながら飲食店が立ち並ぶ界隈へと向かっていく。
去っていく三人の背後で、ぎり、と歯軋りをする男の存在など忘れて。
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