砂漠の賢者 The Best BondS-3
結局三人は港町ならではの、安い海鮮丼の店に入った。
雑多としたその店は、如何にも職人といった雰囲気の男達が魚を裁き、パートらしき中高年の女性が忙しげに動き回っていた。
「ここの店にはどうしてビールが置いてないの?」
ジストの高級志向を指摘していたエナが頼んだのは、店の中で最も値の張る丼で、しかも大盛り二杯ときた。
ラフも一緒に食べるんだもん、というエナの言葉が真実だとしても余りに大食漢だ。
それを粗方食べ終えた――ほぼ一人で――エナがテーブルに置かれたメニューを手に取りながら、不満そうな声で言った。
手首を返しメニューの裏面を見るが、其処に何も書かれていないことは知っていた。
もう何度も見ているからだ。
「めひひほーりゅはけっつーはんはえぐぁおはひぃんらよ……」
「おかしくない! メシ=酒! これはアンタが剣の手入れしたり、ジストが女の子に声掛けることくらい、自然なコトなの!」
最後の一口を頬張ったゼルがもごもご言うのをエナは片手であしらった。
「…………何で通じるの?? 電波? 電波で会話??」
食後の煙草を吸っていたジストは、え? わかるでしょ、普通。というエナの表情に、呆れたように軽く肩を竦めた。
「ってゆか、煙草はイイんだ、この店…」
エナが恨みを込めた目で呟く。
新鮮な魚を取り扱うこのような店は、禁煙のところが多い。特に昼間は。
煙草の煙が魚の鮮度を落とすだとか、臭いがつくだとか、繊細な魚の味がわからなくなるだとか、理由は色々あれど、つまりは職人気質の板前さんのこだわりだろう。
「煙草の一本や二本じゃ、店の回転率そんなに変わらないからね」
つまり、酒を置かないのは客に長居させないためだろうとジストは言った。
それよりも、なんで動物が許可されてるんだか、と溜め息まで吐いた。
ああ、成る程、と納得するゼルの横で、エナが席を立った。
「じゃ、これから自由時間ね」
突然の申し出にゼルとジストは首を傾げる。
「自由時間?」
エナがそんなことを言い出したのは初めてだった。
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