砂漠の賢者 The Best BondS-3
「ま、どのみちお前じゃ無理だろうがな」

 嘲り、憐れむ。
 エナがエナである故の強さに惹かれた男に。
 エナがエナである故の弱さに惹かれたジストは、だから笑う。
 似たようでいて全く異なった性質を。
 暗い部屋の中、絶世の美女は侮蔑を顕わに不健康そうな細い男を見下ろしていた。
 実際にはただ立っているだけの女に男は底知れぬ恐怖を抱いた。
 それほどに、その存在は強大だった。
 それほどに、その存在は鮮烈だった。
 冷や汗が男の背中を滑り落ちる。
 俄かに震える膝は武者震いなどではない。
 力の差は歴然。
 胸倉を掴んで、美女改め、美青年は哂う。

「お前は、愚かだな」

 後はもう、彼の独壇場。


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