砂漠の賢者 The Best BondS-3
「創る……? 随分馬鹿馬鹿しいことを言うんですね。貴方も私と同じ人種だと思いましたが」

 ジストは笑いを含ませる。
 こういう男の方が扱い易い。
 エナなどより、よっぽど。

「なんだ、本当に気付いてないのか」

 目の前の男と自分。
 確かに似た性質を持っていると言えなくもない。
 否、同じ性質を持っていた、というべきか。
 だからこそ、わかるのだ。
 この男が真実求めているものが。
 壊しても壊しても壊れずに存在し続ける存在を。
 どんな自分でも無条件に受け入れてくれる存在を。
 無意識下で求めている。
 だが、それが不可能だということも同時に知っているのだ。
 育むのではなく、壊すことを選んだ時点で。

「真っ正面からぶつかるのが怖くて、奪おうとしたんだろう?」

 リゼは目を瞠った。
 それを見て、小気味良く鼻を鳴らす。

「それこそが、あれとお前の間にある決定的な差」

 端から敗北を認めていたくせに、男はそれを受け入れなかった。
 だからこんなにも見苦しくこの目には映る。
 同時に愛しいくらいの侮蔑を伴って。

「そして、俺とお前の差だ」

 ジストは立ち上がり見下ろした。
 その目線の違いがそのまま立場の差だと見せ付けるように。
 一見無防備に見えるその姿にも男は反撃する様相は見せなかった。

「あいつは、壊すより見てた方が面白いんだよ」

 壊すなど勿体ない。
 あの少女はこれからもっと美しく花開いていくはずだ。
 誰にも囚われず、誰にも支配を許さず。
 けれども周囲の荷物の全てを背負い込み潰れそうになりながら。
 きっとより強くしなやかに変化していく。
 全てを巻き込み、全てを魅了し、その全ての責任を無視出来得ぬ不器用な少女だからこそ、不安定な心が一際輝く。
 奇跡のような存在だ。
 そんな存在、この機を逃したら二度と出会えやしない。
 だから、創ることを選んだ。
 だから、見守ることを選んだ。
 愛情をかけすぎて育てても根腐りを起こす厄介者だから。
 かといって目を離せば彼女は自ら危険に飛び込んでいく――命すら賭して。
 せいぜい死なないように見守るのが精一杯だ。
 なんと手のかかる娘なのか。
 だが、そこらへんに群生しているような小さな花が見たいのではない。
 自分が関わった以上、他の誰も見たことがないような大輪の花を咲かせてもらわねば。

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