月の綺麗な夜に
「私さ、知香みたいになれたらいいのに」
想いを思考回路にだけとどめることが出来ずに、口を通して吐き出す。
知香は一瞬驚いた顔したけれど、すぐに真面目な顔になった。
「うちはね、美月ちゃんになれたらっていつも思ってるねんで」
「本当だよ」と、知香は続けた。
なんで?そう聞こうとした瞬間に、知香が「なにあれ?」と驚きを含んだ声をあげた。
視線の先では赤い髪をした男がほふく前進していた。
「なにあれ?」
見慣れないその光景に知香と同じ言葉を呟いてしまった。
怪しまれないように通り過ぎる時に横目で見ると、赤い髪をした男は横にある公園の中を必死に警戒しているようだった。
こんなところでいい年して服をドロドロにするなんてありえない。
今日は不快なものばかりを見る日だ。