続・祈りのいらない世界で
イノリがキヨを見つめていると、キヨの口が段々と緩んでいく。

イノリは気付いた。




「…美月。お前起きてんだろ!?」

「ふっ…ふふふふ」

「何笑ってんだよ!!狸寝入りしやがって」

「あはは!だってイノリ、ずっと独り言話してんだもん。もっと聞いてたかったけど、無理!限界!!おかしーい」



キヨがお腹を抱えながら笑っていると、目を覚ましたフウがキヨに駆け寄ってきた。




「……きよ」

「フウ、おはよ。もうすぐカンナ帰ってくるからね」

「……けんは?」

「ケンはいつも帰ってくる時間がまばらだからなぁ」



4人がお互いを名前で呼び合っている為か、フウはケンをパパ、カンナをママと呼ばない。


でもケンとカンナはそれでいいと言っていた。



ケンは法律上フウの父親ではないし、カンナにとってフウはカゼであるからなのかと、キヨは思った。




「私、自分の子どもにはママって呼んで欲しいな。キヨとか美月って言われても嬉しくない」

「まぁな。俺が自分のガキにイノリって呼ばれたら間違いなくぶん殴るぞ」

「とか言って、イノリは絶対我が子に溺愛するよ。そんな暴言ばっかり吐いてるけど」



キヨはイノリに溜め息を吐くと、フウを抱っこした。



その瞬間。



「………ねぐしぇ」

「え゙っ!!??」



フウはイノリに手を伸ばすと、ねぐしぇと呟いた。

訳すと多分『寝癖』。




「…私がよく喧嘩するとイノリに向かって寝癖って言うからかな?フウ、そんなの聞いてるの?」



キヨがフウを見るとフウは首を傾げる。
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