続・祈りのいらない世界で
「イノリは♪寝癖が♪毎日♪付いてる♪ねぐせねぐねぐせ〜ねぐせねぐねぐせ〜♪」



クマさんの曲を弾きながら酷い歌詞を唄うキヨ。

フウはピョコピョコ跳ねながら喜んでいる。




「ふざけんな!お前がそんな歌唄ってっからフウが寝癖って言うんだろ!!」

「……ねぐしぇねぐねぐしぇ〜♪」

「ほらみろ!!」



イノリが大きな声を出すと、フウはピアノを弾くキヨの背中に抱きついた。




「なぁに?フウ。フウは私のことが大好きなのね♪」


「同い年のガキに見えんじゃねぇの?」


「そんなワケないでしょ!…でもフウ、大きくなったら絶対美形になるよね。美形夫婦の子どもだもん。その上カゼに似たらスポーツマン、カンナに似たら秀才になるし。私、フウと結婚しようかな」


「はぁ!?フウが結婚出来る歳になったら、お前は40のババアだぞ。フウが嫌がる」



いつものように口喧嘩を始めるイノリとキヨ。




フウにとってみればただの同居人である夫婦のせいで

将来口が悪くなるであろうフウは、はたして次はどんな言葉を覚えてしまうのだろうか。




「ふふっ。イノリ、死ぬ程好きだよ」



いきなりキヨが呟くと、イノリは目を見開いた。




「死んだらダメだろ。俺の事が好きなら死ぬな。死なれたら困る」

「そういう意味で言ったんじゃないのにっ!イノリだって前、俺を信じられないなら殺せとか言ってたくせに」




言い合う2人を眺めながら、フウは先程のキヨの歌を楽しそうに口ずさんでいた。



「……ねぐしぇねぐねぐしぇ〜」




その光景を写真の向こうにいるカゼが見つめていた。




写真に映るカゼがフウにちゃんとパパに見えているのかなと思ったキヨだった。
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