続・祈りのいらない世界で

10・〜高校生編〜

嬉しい、楽しい、愛しい
切ない、悲しい、寂しい…



沢山の感情は5人でいる時に学んでいる。

それは幸せな事であり、辛い事でもある。





「おはよ。…あれ?イノリは?」



高校2年生の夏休み前。


学校に一緒に登校している5人。

今朝もいつものようにキヨが家を出るとイノリだけがいなかった。




「今日も寝坊かな?」


「………キヨ。今日はイノリ、部活の試合だよ」


「え?でも試合の時もイノリ、一緒に登下校してるよね?」


「今日は他校で試合だから、もう行っちゃったのよ」



カンナの言葉に納得したキヨは、自分の自転車を取りに車庫に向かおうとした。




「………キヨ。今日は俺とニケツしよう」

「え?いいのカゼ。私重いよ?」

「………キヨくらい大丈夫。乗って」



カゼは早く乗れと言わんばかりにベルを鳴らす。




「えーっ!俺がキヨ乗せたいっ!!キヨ、俺とニケツしよ♪」

「………ケンは帰りにして。俺、部活終わるの遅いから一緒に帰れないし」



カゼの言葉にケンが渋々頷くと、キヨはカゼの自転車の荷台に座った。


4人は学校に向かって自転車を走らせる。




朝、二人乗りで登校しているイノリとキヨ。


部活に入っていないキヨは帰りはイノリの部活が終わるのを待って一緒に帰宅している。




「今日はイノリいないのかぁ…。ウチの学校で試合する時は朝と帰りは一緒だし、休み時間ごとに見学に行くからいないって感じはしないよね」


「………寂しい?」




カゼの問いにキヨは首を振った。




寂しいと認めてしまえば本当に寂しくなってしまう。


キヨは寂しさに支配されないよう、自分の気持ちに嘘をついた。





「………強がらなくてもいいのに」

「強がってないもん!!」



カゼ、カンナ、ケンはキヨを気にしながら学校へと向かった。
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