続・祈りのいらない世界で
「私がブーケ投げしなかったのはね、カンナにあげるって決めてたからだよ。だから貰って」


「…キヨ」


「このブーケは、カゼとカンナのブーケだよ。…今日はカゼとカンナの結婚式でもあるんだよ」



キヨがニッコリと笑い、自分が身に付けていたベールをカンナに掛けるとカンナは涙を流した。




カンナが私の幸せを願ってくれているように

私もカンナの幸せを願っている。




「…ほら、カンナ。カゼが見てるぞ。泣くな」

「そうだよ。カンナが泣いたらカゼが心配しちゃうよ」



イノリとケンは優しく微笑む。



カンナは立ち上がると、空に向かってブーケを投げた。


星が引き詰まる夜空に舞う白い花束は、星の一員になった。




優しく吹き渡る風の音が、まるでカゼが囁いている声に聞こえた。


ブーケが空に舞っているこの瞬間だけは…





“…………イノリ、キヨおめでとう。


そしてカンナ…

とっても綺麗だよ”








4人が帰った後、カゼのお墓に供えられていた白いブーケが、月に照らされながら風に揺れていた。
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