続・祈りのいらない世界で
するとイノリが立ち上がり、2人に近寄った。




「次は俺がケンと話してくるわ。…部屋で煙草吸うから美月は入ってくんなよ」



イノリは煙草をくわえると、足早にケンの元へと向かった。




「イノリ、煙草やめられなかったのね」


「うん。でも前よりはだいぶ吸う量減ったよ?職場では吸ってるみたいだけど、家じゃ滅多に吸わないし。子供が生まれる頃には禁煙出来てるんじゃないかな」


「子供に構わなきゃならないから吸う暇もないしね」



キヨは紅茶を淹れると、カンナにカップを渡し共にソファに座った。





その頃、イノリはケンの部屋でケンと話していた。



「で?どうすんだよ、お前は。カンナをあぁやって突き放して1人逃げるのか?」

「逃げてるんじゃない。カンナを悩ませたくないんだよ」

「…ケンらしくねぇな」

「え?」



イノリは灰皿に灰を落とすと、ケンを鋭く見入った。




「お前はいつだって相手の幸せを考えて最善の行動をしてきただろ。ケンのそういうとこ、俺はすげぇと思ってたよ」


「イノリ…」


「でも今のお前はカンナより自分を守ってる。自分が傷付くのが恐いだけだ。…カゼに悪いと思ってんならその考えは捨てろ。カゼはそんな器の小さな男じゃねぇよ」



グリグリと煙草の火を消すイノリ。

ケンの部屋にはイノリの煙草の匂いが広がっていた。





「…やっぱりイノリには適わねぇな。昔から俺なんかより大人びてて、社会人になって更に大人になった気がするよ」


「まぁな。ガキの頃は美月を守ってやらなきゃならねぇから大人ぶってたけど、今は守ってやらなきゃなんねぇのが2人もいるからな。
…父親になるってこんな気持ちだったんだなぁ」



父親のように優しく笑うイノリを見たケンは、薄く微笑んだ。
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