続・祈りのいらない世界で
「どうした?どっか痛いのか!?」

「…っ…。大丈夫。眩暈がしただけ…」



段々と視点が合ってくると、キヨはイノリに微笑みかけた。




「…とにかくお前は休んでろ。あとは俺がやるから」



イノリはキヨの脇を掴んで抱き上げると、そのままリビングのソファに運んだ。

キヨはグッタリとソファに横たわる。




「…辛そうだな。カンナが妊娠してる時は、つわりも軽かったしピンピンしてたけど」



イノリはキヨの頭を撫でながら話す。




「まぁお前、ガキの頃から体弱かったもんな。だからか」

「…イノリが足りないからだよ」

「…は?」



キヨは自分でも何処を見ているのかわからない場所を見つめながら呟く。




「…だって最近構ってくれないんだもん。あんまりほったらかすと、フウと浮気しちゃうんだから」

「出来るものならな」



2歳に満たないフウと浮気など、馬鹿げた話。

それに、仕事をしているイノリに構えという方が無理な話である。




そんなこと、わかっているけど


日中はフウと2人きりで
特にする事もなければ
つわりや頭痛で辛くても、助けを求められる人がいない。



それが恐くて、辛くて寂しいキヨは、イノリに甘えたくて仕方なかったのだった。




「…浮気しちゃうんだから。イノリのいない時に誰かとあんな事やそんな事…しちゃうもんね」

「はいはい。出来るんなら勝手にしろ」



キヨの言葉を本気にしていないイノリ。


素っ気ないイノリの態度なんていつもの事なのに、気分が悪いせいか今のキヨにはその態度が腹立たしくて仕方なかった。




「本気だよ!?イノリはいつもそうやって余裕こいてるけど、私がイノリを選んだから今一緒にいるだけで、あのままケンと付き合ってたってよかったんだからね!!」


「…勘違いするな。お前が俺を選んだんじゃない。俺がお前を選んだんだ」


「違うもん!!私がだもん!!」



折れないイノリの態度が気に食わないキヨは、イノリを睨み付けるとソファから起き上がる。


するとイノリはキヨをソファに押し倒した。
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