続・祈りのいらない世界で
「優月は旦那と家にいるわ。私は美月に優月のおさがりのベビー用品渡そうと思って来たのよ」



華月はキヨに大きな紙袋を渡す。


中には子ども用の服や靴、玩具や哺乳瓶が入っていた。



「ありがとう、お姉ちゃん。でもいいの?まだ真新しいのも入ってるけど、お姉ちゃん今の旦那さんとの赤ちゃん作らないの?」


「私はもう子どもは作らないわ。元々、子どもは好きじゃないしね」



華月はそう言うとリビングから出て行った。




「…お姉ちゃん…」



キヨが華月を見つめていると、キヨの母がリビングにケーキを運んできた。


ケーキの真ん中には、『Happy birthday INORI』と書かれたチョコレートのプレート。




「明日は祈くんの誕生日だからケーキ作ったのよ。みんなで食べましょ」

「あーっ!!お母さん、ズルい!!私が明日作ろうと思ってたのに」

「早い者勝ちよ。祈くんのことが好きなのはお母さんも同じだもの」



似た者同士の親子に笑いながら、義母の作ったケーキを食べるイノリ。




キヨと一緒に歩いてきた年月は、キヨの両親との年月でもある。




キヨが母とキッチンで料理の支度をしている中、イノリはキヨの父と酒を注ぎながら話していた。



「祈くん、美月とはどうだ?」


「何も変わりませんよ。小さい頃からの関係と何も。それが幸せなんですけどね」


「私達は長女である華月にばかり期待していたから、美月の甘えたい気持ちは祈くんに向いたんだろうな。

きっと私達に見向きをしてほしくて異常なまでの泣き虫になったんだろう。

なのに私達が構わないから…我慢していた感情を、何も求めず受け止めてくれる祈くんにぶつけたんだと思う。

…今思うと、美月と祈くんには悪い事をしていたな」



「お義父さん、俺は感謝してますよ。きっと俺は、俺がいなくても平気な美月には惹かれません。だから、俺に美月のすべてを任せてくれて本当に感謝してます」


「ありがとう、祈くん。今更改まって言う事じゃないが、美月を宜しく頼むよ」



キヨの父はイノリに頭を下げる。
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