続・祈りのいらない世界で

24・新しい物語

また1つ
新たな年を迎えたキヨ達。


でも今年はいつもと少し違う。



キヨとイノリにとって

初めての経験、新しい出会いが待っている年である。






「ケンは正月休み取れなかったんだね。イノリは一週間も取れたのに」

「あいつは派遣だから仕方ねぇよ」



仕事があるケン以外の4人は、新年の挨拶にと里帰りをしていた。



もう上京して6年以上経つというのに、キヨ達は地元の空気に安堵感を抱いていた。



渋滞を抜けて実家へと着いた4人は、車から降りるとググッと伸びをする。




「カンナはフウとカゼの実家にいるの?」

「フウはカゼのおばちゃんに預けて、私は両親といるわ」

「…カンナが一緒にいなくていいの?フウ、寂しいんじゃない?」

「フウは私よりキヨといたがるわよ」



カンナはそう言うと、フウを抱きかかえてカゼの実家へと入っていった。


キヨはそんなカンナの背中を見つめる。




「…カンナの事はほっとけ。今は時間に任せるしかねぇだろ。それより美月はどうする?実家にいるか?俺ん家来るか?」


「うーん。親に挨拶してからイノリん家行く」


「わかった。俺もお前の両親に挨拶しなきゃだし、先お前んとこ行くか」



イノリとキヨは手を繋ぐとキヨの実家へと入った。



リビングに向かうと、コタツの中に入ってくつろいでいるキヨの両親と華月がいた。




「あら。おかえり、美月と祈くん。渋滞大変だったでしょ?」

「ご無沙汰してます。新年の挨拶に伺いました」

「そんなにかしこまらなくていいのよ。祈くんはもう私の息子でもあるんだから。ね?」



イノリがキヨの両親に頭を下げていると、キヨは華月の隣りに座った。




「お姉ちゃんも帰ってきてたんだね。…あれ?優月ちゃんは?」



優月(ゆづき)とは華月の息子で、キヨの甥っ子である。

イノリとの子供だと間違えていた子供。




華月は離婚、再婚を経て今は落ち着いている。
< 289 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop