続・祈りのいらない世界で
キヨは日記に再び鍵を掛けると、元の場所に戻した。


本音をあまり口にしないカゼの本音が書き記されたノートを、カゼに返したのだった。





翌日。

産婦人科に行ったキヨは妊娠を告げられた。



カンナは自分の事のように喜び、ケンもおめでとうと何度も呟き、5人の両親や華月も泣きながら喜んだ。




「あと10ヵ月だけか。俺だけの美月でいるのは。何か複雑だな…」


「何言ってんの!!絶対イノリ、親バカになると思うよ?そしたらきっと、私の事なんかほったらかしにするんだ」


「ほったらかすかよ。俺は美月バカだ。安心しろ」



イノリはキヨのお腹に顔を寄せると、優しく微笑んだ。




「美月に痛い想いさせたらぶっ飛ばすからな」


「ちょっと!我が子に何言ってんのよ」


「美月を泣かせていいのは俺だけだ。…殴られたくなきゃ美月が痛くないように生まれてくるんだな。俺の子どもだ、美月を泣かせない方法くらいわかるだろ」


「わかるワケないでしょ!?…どうか性格だけはイノリに似ませんように」


「何だと!?」





あと約10ヵ月後。


沢山の人に祝福された2人の愛を形とした命が、この世に誕生する。
< 35 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop