続・祈りのいらない世界で
「どうしてっ…3年も帰って来ないの!?あの日…ただいまって言って欲しかった!好きだよって、愛してるよって…もっともっと言いたいのに…。……フウを抱っこしてあやしてる、カゼを見たかったよぉぉ!!」



カゼの前で言えなかった
カンナの本音、カンナの叫び。



どうか…

カゼに届いて。




「…ごめんなさい。カゼ、ごめんなさい。あなた以外の人を愛してごめんなさい。でも…幸せになるから。フウを幸せにするから…私を、許して」



カンナ。

カゼは絶対、カンナを責めたりしない。


逆にホッとしてると思うよ。


カゼの事だもん。

カンナの幸せを願ってるはず。

だから大丈夫。





泣きじゃくるカンナを見たフウがポツリと呟いた。




「……ただーま、かんな」

「え?フウ?ただいま?」

「……かじぇ、おかえりしゃい」



ただいま、カンナ。

カゼ、おかえり。




覚束ない口調で約3年前、カゼとカンナが言いそびれたやり取りを口にしたフウ。



息子のフウが母親のカンナが帰ってきた事を理解した言葉。




「…ごめんね。ごめんね、フウ。ダメなママでごめんねっ!もう…離れないから」



ちゃんと親子に戻れた2人を見つめていたキヨは、少しだけリビングの出窓を開け放した。


風を感じる為に…。










“………ただいま”


おかえりなさい。
< 375 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop