続・祈りのいらない世界で
「……よーちゃん、ふうと、べいーかー(ベビーカー)で、おしゃんぽ(散歩)しようね」

「あー」



引っ越しなんて到底理解出来るはずのないフウとヨウセイは、物がなくなったリビングの片隅で仲良く遊んでいる。



「…よし。荷物も積み終えたし、そろそろ行こうか」

「そうね」



キヨ達より2日早く引っ越すケン達は、荷物を積み終えた事を確認すると、家を出る事にした。




「…フウ、風邪引かないようにね。たまに遊びに行くから、その時はまた陽ちゃんと遊んであげてね」



キヨはフウの小さな両手を握ると上下に振った。




「……きよ。いっしょに、おえかけ(お出掛け)ないの?」

「うん。私はお出掛けしないよ」

「……よーちゃんは?」

「陽ちゃんも行かない」



キヨがフウを見ると、クリクリしたフウの大きな目が潤み始めた。




「……いやぁぁぁ!!ふう、よーちゃんといる―!うぇぇぇんっ!!」

「フウ…」



小さいから何も分からないワケじゃない。

フウはフウなりに別れを理解していたんだ。



キヨはそう思った。
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