桜の散る頃に
「出席番号順に席に座って。」
朝倉のかけ声に生徒達は席に座る。
そこに空いている机が1つ。
上林真波の席だけが空いていた。
あまりにも初対面のインパクトが強烈過ぎて。
朝倉は無意識のうちに真波のことを意識していた。
無事に入学式後のやるべきことを全て済ませ終わると、職員室に戻り早速別の仕事に取りかかる。
家庭訪問だ。
高校生にもなれば省略しても良さそうなものだが、こればっかりは省略したくても出来ない行事の1つだ。
地区もバラバラな為に日程を組むのも簡単にはいかない。
試行錯誤しながらもようやく日程を組終わると、ふと思い出すことがあった。
真波が言った一言………
『保護者なんていません。』
あの言葉は真実なのか?
それとも困らせる為についた嘘なのか?
グルグルと頭の中で想像が膨らんでいく。
「あまり深入りするなよ。」
朝倉の頭を軽く撫でて、岩部は隣に座った。
「どうゆう意味だよ?」
「ん?そのまんまの意味。深入りするなって言ってるの。」
「別にそんなつもりはないよ。ただ、保護者も来てなかったみたいだったから気になっただけだよ。」
「あの手の生徒は気を付けないと骨抜きにされるかもしれないからな。」
「なんだよ。それ……」
「まあいいさ。それよりどうする?今日の飲み会。」
朝倉は荷物をバッグに詰め込んだ。
「悪い。俺はパスね。帰って色々やることあるし。」
「何だよ!出るって言ってたくせに。」
「お前と2人なら気使わなくていいけど、校長とか理事長と一緒に飲んでも酒の味なんてしないだろ?」
「まあ、それは言えてる。だったら俺もパスして……」
「お前は行け!紗央莉ちゃん出るんだろ?1人にするもんじゃないだろ。」
「あいつは俺が居なくても飲み会は率先して出るの。」
「……お前ら付き合ってるんだよな?」
「さあ……」
「さあって、そんなあやふやな関係だったのかよ?」
朝倉は荷物を持つと職員室を出た。
初日から色々と考えさせられた1日だったと疲労困憊していた。
「朝倉先生!」
呼ぶ声に振り向くと、上林真波がおどけた顔で立っていた。
「上林。何で入学式そうそうボイコットなんて宜しくないことした?」
「……気になる?」
「当たり前だろ!俺はお前の担任になったんだ。自分の受け持つ生徒の素行は担任の責任になるんだよ!わかる?」
「お決まりのことしか言わないのね……先生も。」
真波は朝倉に軽く一礼すると、さっさと帰ってしまった。
「何なんだよ……あいつ……」
色んな事が腑に落ちなかった。
が、朝倉は車に乗り込むと勢い良く発信させた。