欲しがりなくちびる
「……どこ行ってた」

いつ見ても、寝ぼけ眼の浩輔は子供みたいで可愛い。

「シャワー浴びてきた」

「ん……。いい匂いする」

言いながら腕を伸ばした浩輔は、朔を自分の胸に引き寄せる。

「昨日はごめんね。私だけ、その……」

「ぁあ? 男は簡単に抜けるから気にすんな」

あからさまな言葉を口にするのは気が引けて口籠れば、浩輔は眠気のせいか、少し不機嫌そうな声を出す。

「……どうした? 挿れてほしかったのか?」

浩輔は朔を胸に閉じ込めたまま、喉仏の辺りで彼女の髪をぐりぐりと撫でる。

結論から言えばそうであっても、そこはニュアンスが少し違う。浩輔とひとつになりたい。そういう気持ちを何て伝えればいいのだろう。

「あとでな。……もう少し寝てから」

暫くして浩輔から寝息が聞こえてきたため、朔も眼を閉じる。

考えてみれば、浩輔だって毎日疲れているはずだ。そういう素振りを見せないから、最近はつい気遣うことを忘れてしまっていた。もしかすると、浩輔は朔がいることで色々と我慢しているのかもしれない。彼の許に越してきて来月で半年が経つ。少し甘え過ぎたのかもしれない。

「ま、まって……! 待って、浩輔!」

「どうした?」

「だめだって、もう、本当におかしくなるから……っ」

もう少し眠ってからと言った浩輔は、うとうとしかけた朔をひときわ厭らしいキスで起こした。それからどのくらい時間が経つのか分からなかったが、朔はもう何度も浩輔の熱に浮かされて果てを見続けている。

「だったら壊れろよ、朔。そしたら俺が、ちゃんとおまえを取り戻してやるから」

霞みが掛かるぼんやりした頭では、それがどういう意味なのかを拾うことさえできない。



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