欲しがりなくちびる
食事のあとはシャワーを浴びて、浩輔と再び身体を重ねる。

滑らかな素肌の感触。硬い胸板。大きな肩。全てが愛おしくて堪らない。

何度朔を求めても飽き足らない彼の熱情に、身も心も甘美に震える。

二人に気を遣っているのか、赤ん坊はあれからすやすやと眠ったままだ。

夜が明けるのはまだ先。

朔を見下ろす綺麗な切れ長の双眸。

ぞくぞくするほどの雄の瞳で射抜かれて、どっぷりと彼のその情熱に溺れてしまいたい。


すっかり満ち足りた心と身体を抱き締めたまま迎えた朝、朔は薄く瞼を開く。

壁に立て掛けられているキャンバスは、最近浩輔が仕上げたばかりの母子像。裸の胸に赤ん坊を抱いた女性の背中は凛としながらも優しさで溢れている。

重たい眼でぼんやり眺めていると、赤ん坊の声が小さく聞こえた。

きっとすぐに泣き出してしまうだろうと思っていると、案の定ぐずり始めた。

「浩輔、浩輔」

「んー……」

寝返りを打った浩輔の腕がちょうど朔の裸の胸に被さって、彼はそのまま柔らかさを確かめるようにして大きな手のひらで弄り始める。

「そろそろ行ってあげないと、本格的にグズるから」

「んー。分かった……」

浩輔は気の無いような返事をして何度か私の胸を揉んだ後、大きく上下に伸びをすると、寝癖がついた髪をくしゃくしゃとしながら寝室を出ていった。

残された朔も倦怠感が残る身体を叱咤してベッドから起き上がる。

今日は浩輔が育児も家事もするとは言ってくれたけど、貴重な休みだからゆっくり休んでほしいし、全てを任せるというのもどこか罪悪感がある。

着替えてリビングに行くと、浩輔の腕の中にはすっかり上機嫌に頬を緩ませて、手首に付けた音が出るおもちゃをがらがらと振って喜ぶ赤ん坊がいる。

「浩輔といる方が嬉しそう」

朔が思わずそんな言葉を口にすれば、浩輔はミルクを作りながら笑う。

「昨日、こいつと約束したんだ。お利口にしてたら、朔をもっと幸せにしてやるって」

屈託なく言う浩輔を見つめる自分は、きっとひたすら普通の顔をしているだろう。

浩輔の言葉に驚いて、けれどもそれ以上に胸の奥が熱くなって、愛おしさとか嬉しいといった感情が込み上げてきて、朔はくしゃりと顔を歪めて微笑んだ。



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