欲しがりなくちびる
先に酔い潰れたのは浩輔の方だった。

彼をベッドに寝かせると、朔は酔い覚ましにミネラルウォーターをグラスになみなみと注いで飲み干した。

メイクを落とすと、もう手放しに若いとはいえない素顔には疲れが薄らと現れている。いつもより多めに美容液を使うと、手のひらに残ったそれを首筋や肘に丁寧に伸ばしていく。若いうちからそうしておくと、その後の肌の状態が全然違うのだと雑誌のスキンケア特集で読んだ。

リビングへと戻る足をふと休め、玄関の方へと逆戻りする。

浩輔が納戸だといった部屋の扉を開けてみれば、そこは無造作に立て掛けられ重ねられたキャンバスで埋め尽くされていた。

その一角には新聞紙を広げて無理やり作られたスペースがあり、イーゼルだけが用意されている。

浩輔は何を描こうとしたのだろう。

それともまだ題材が決まらなくて放置したままになっているのだろうか。

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