欲しがりなくちびる
朔は寝室に戻ると、すっかり眠っている浩輔の傍らに立つ。

微かに開いた唇の前に手を翳すと、やわらかな吐息が指先を湿らした。

その寝顔はまだ少年のように愛らしい。


実家で一緒に暮らしていた頃の浩輔は、朔にいくつもの知らなかった顔を見せた。まるで、彼女が知っているのはほんの一部分でしかないと言わんばかりに、3年振りに再会した浩輔は、その瞳で、その唇で、朔に毒づいた。

それでも、朔は優しい浩輔しか覚えていない。

泣いている彼女にもっと泣かせるようなことを言って唆しては、さらに涙を溢す姿に満足そうに微笑む。まるでそのご褒美にと、彼自身で何度も朔を快楽の果てへと導いた。



朔と浩輔が初めてセックスをしたのは、中学の入学式があった日の夕方だった。

それまでの二人は挿入という行為をしていないだけで、もうそれらしいことを経験していた。

それがいつから始まったかは定かではないが、幼稚園時から一緒にお風呂に入っていたし、お互いの違う身体を確認するようにじゃれ合ったりしていた。小学校高学年といわれる歳になる頃には、膨らみかけた朔の胸を浩輔が触り、浩輔のまだ小さなペニスを朔が握ったりした。

擽ったかっただけの感覚が徐々に気持ち良さに変化していくと、覚えの早い子供たちは貪欲なまでにそれを追及するようになっていった。


朔と浩輔が初めて一つになった時、彼女達はお互いを抱き締めながら二人して泣いた。快感から溢した涙なのか、感極まったのかは分からなかったけれど、ただただ泣いていた。

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