【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
 

「貴様の頼みか。何だ。とてつもなく不本意だが聞いてやろう」


「そこは何だで終わらせろよ…」


「無理な話だな。本題に入れ、俺は待たされるのは嫌いだ」


「これから先、きつくなる」


露李にとって、ということは聞くまでもない。

無言でその瞳を見つめ返した。


「守護家の内情は想像より遥かに泥沼だ。加えて今の状況が悪すぎる…けど、露李を抜くわけにもいかねー」  

「ならばこの俺にどうしろと?」


「お前の素性は頭領の俺達が巧く言っておく。仕える存在の風花姫とはいえ誰かが何かしないとは限らない」


何か。

それが分からないから恐ろしい。


虚空を睨むように見据える水無月。


「雹雷鬼と露李の正体が知れれば騒ぎが起きる、ということか。確かに鬼は悪として書かれることが多い」


「物事をプラスに考える人間ばかりじゃねーからな。どんな事態も避けた方が良いだろ。俺達ももちろんだが露李から目を離さないでくれ」
 

「鬼の誇りを失くすことはできない──が」


結が最後の一文字に反応したのを何だかくすぐったい気持ちで眺めながら、水無月は次の言葉を紡いだ。


「大切なものを守り、己を貫くのもまた鬼の矜持だ。露李のことだからな」


「頼む」


そう言って二人は竹刀を再び握り、来る日を思い浮かべた。


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