brass band
まさかと思い、質問する。
『終わってないの?』
『いやー、ほら、提出が初回授業のやつとかあるじゃん?
それやってないんだよねー』
『なんだ、初回授業なら余裕なんじゃん?社会と技術だよね?』
『いや……社会明日なんだ……』
『えー……やってこいよ』
『いや、ほら、忙しかったし』
よく言うよ。
もう、あの部室に行くこともなくなっていたはずなのに。
『ふーん』
生返事だけを返して、また、歩みを進める。
私らの間には、言葉という物が要らない時もある。
阿吽の呼吸だとか、以心伝心、意思疎通だとかそういうことじゃなくて、会話をしない時があっても、気まづさを感じない。ということで、そういう友達はなかなかいないのではないだろうか。
『……にしても、相変わらず遠いな』
10分ほど歩いたところで私はつぶやいた。
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