ともだちからの卒業
「なにはなしてたのよ?」
「…なにも。たまたま見ただけたよ……」
幸い、会話は聞かれてなかった。これを聞かれてたら転入生がいじめのターゲットになってしまう。
「そう」
驚くほどの奈美のさっぱりさに背筋が凍った気がした。
すると3人は転入生に近づき
「ゆあちゃん、なにしてるの?」
と言った。
3人の真後ろにいたわたしは、静かに転入生に合図をした。
≪わたしと喋ったこと言わないで≫
転入生は悟った顔をしてわたしを見たあと、こう言った。
「何もないよ。何してるのって言っただけ。そしたら、牧野さん何も答えなくて、それだけ。」
にこっとして、いつもの調子で。
「そっか。ほんと感じ悪いね悠ちゃんって」
面白がってわたしを見下ろし、ちょっと肩と肩を当てた。
「じゃー、まぁ、いいよね。ね。悠ちゃんはほっといて、戻ろう?」
奈美たちと転入生は一緒に教室を出る。
でも転入生は、ひとことだけ言ったんだ。
「あたしは牧野さんいい子だと思うけどね」