シャッターの向こう側。
 私らしく。


 私が思うように……


 あ。


「最近、時間が飛ぶように過ぎますね」

「時間?」

「集中している時間が多いです」

「それは良いことなんじゃないか?」

 宇津木さんの言葉に、掴まれたままの拳を振りほどき、カップを両手で持つ。


 逆に……

 自分に使える時間が減ったのは確かだ。

「仕事が多すぎるとか、そんな文句なら受け付けないぞ?」

「そんな事は言いません。違うんです」

 うまく言えないけど……

「集中していたいときに集中が途切れるんです」

「はぁ?」

 そもそもこっちに出てきて、友達らしい友達は佐和子位しかいない。

 あの子はあの子でいつも忙しいから、たま~にメールをするか電話するか……その間にちょっと会うくらいだ。

 別に仕事について文句を言うつもりはない。

 ないんだけど……


 なんだか最近プライベートが充実していない気がする。

 前は逆だったのよ。

 仕事が充実していなくて、プライベートが楽しくて……

 でも

 それっておかしいじゃない?


 仕事も順調。

 文句もなければ楽しくやってる。

 恋人もいるわけだし、坂口さんはいい人だし、ちゃんと気を使ってくれているし……


 なのに……


 なのに、楽しくない?
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