シャッターの向こう側。
「神崎」

「ふぁい!」

 思わずキョロキョロしたら、冷ややか~な宇津木さんと目が合った。

「お前は目を開けて寝てたのか?」

「そんな訳ないです」

 そんな芸当、出来る人がいるならお目にかかってみたい。

「今野が何度も呼んでたんだが」

「え? あれ。それは失礼を……」

 言いかけると、宇津木さんがスッと目を細めた。

「……何ですか」

「何に集中してたんだ?」


 それはー……


 自分の考えに?


「大丈夫ですよ」

「何を根拠に大丈夫なんだ」

「いろんな事が?」

 とぼけて視線を移すと、お腹を抱えて俯いている今野兄が見えた。


「あの。笑いすぎです」

「ごめんごめん。いやぁ……その集中力はいいことだよ。うん。凄くいい」

 ……笑いながら言われると、褒められている気がしないですが。

「なんかもう、とてもいいコンビネーションなんだね」


 んん?


「私と宇津木さんがですか?」

「そうねぇ。二人とも元に戻った感じ。最近の神崎ちゃんて、どこかよそよそしい感じだったもの」

 加納先輩の言葉に首を傾げる。

「私が……ですか?」

「そうね……」

 言いかけた時、お料理が届いて黙り込む。

「それで神崎さん。話の続きなんだけど」

「あ。はい。聞いてませんでした」

「大丈夫。名前を呼んでただけだから」

 ……あはははは。

「それで……多分だけど、フリーになってもしばらくは荒城さんとこと、宇津木さん達のとこの仕事しかないんでしょう?」

「え? あ……フリーなら」

 そうなるかな?

「じゃ、俺の所に助手こない?」


 は……


「はいぃ?」

「俺も駆け出しだから、そんなには給料出せないけど。契約社員だけの給料よりマシでしょう」

「いや、それはまぁ……」

「と、言っても、完璧なスタジオ持ってる訳じゃないから、撮影する時に手伝ってもらうくらいかな」

 今野兄はにこやかに首を傾げて、宇津木さんをちらっと見た。

「海外にも行きますから、そっちの仕事も受けられない時がありますが」

「それは構わない」

 宇津木さんの答えに頷いて、今野兄は私を見た。

「君にとっては、会社員としてでなく、フリーで働くやり方の勉強になると思う」
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