シャッターの向こう側。

秋色……もしくは接点

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 秋空。

 普段なら、ウキウキしそうなくらいに綺麗な青い空。


 ……だけど、気分は寂しい。

 それが秋空というものかも知れない。

 都会の秋は、どんどん色を失っていく。

 青々とした緑が消え、葉の色は色褪せた茶色。

 カラカラと渇いて、地面に散り積もる。

 紅葉の赤は望めなくて、緑の消えた街路樹が、少し冷たくなった風に凜として立っている。


 それが、寂しくて……

 でも、力強くもある。

 珍しく時間があって、ゆっくりとした空間が不思議。

 一応、カメラを持ってベンチに座っている。

 ……まぁ、サボりと言えばサボり。

 ちょっとくらいは許されると思う。


 ……夏の始めから今まで、全力疾走しているような感じがするし。


 いろんな事があった。


 宇津木さんと初めて組んで仕事をやり遂げ、坂口さんと出会って。

 そして、坂口さんと付き合って。

 荒城さんから仕事のオファーが来て。

 仕事を楽しくなると同時に、プライベートでは落ち込んで。

 自分勝手で、坂口さんとお別れして……

 たった数ヶ月の出来事が、走り抜ける様に過去になっている。

 思えば、それだけ充実していると言う事でもあるな。


 いつの間にか仕事を〝こなす〟訳ではなくなって〝取り掛かる〟様になって……

 優しい人たちに囲まれて。

 ぼんやりしていたら、背後から頭に柔らかいものが乗せられる。

「ふにゃ!?」

 慌てて振り返ったら、有野さんの苦笑が見えた。

「会社の前で堂々とサボってる人を初めて見たよ」

 頭に乗せられた掌を見上げ、苦笑して首を傾げる。

「……って事は、有野さんもサボってるんじゃないですか」

「うん? 俺は取引先とミーティングの帰りだもの。それに、昼がまだだからね」

 うわ。

 正当化された。

「何をぼんやりしてるの」

 有野さんはベンチを跨いで、隣にストンと座った。

「ぼんやりしてる様に見えましたか」

「うん。見えるね」

「……そりゃ、私だって考える時もありますから」

 ブツブツと呟くと、また苦笑が返ってきた。
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