シャッターの向こう側。

否定……もしくは決め事

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「それで……なんの扮装な訳?」


 20日。

 ホテルの一室を借りて女子達が着替える中。

 にこやかな私に対して、困惑気味の佐和子。

「なんの……って。見たら解るよね?」

 藤色のタフタに、サッシュベルト。

 腰にはジャラジャラ金鎖の飾り。

 上はさすがにピッタリしたTシャツと省いてるけど、


「ほら。頭からベールを被れば気分はアラビアンさ!」

 スッポリベールを頭から被った私を見て、佐和子は頷いた。


「誰か解らないわ」

「…………」


 そうかもしれない!


「だって思い付かなかったんだもん」

 見えないながらも、耳にエキゾチック満点のイヤリングを付ける。

 細かい金属が重なり合う音がシャラシャラして楽しい。

「思い付かなかった……って。どこの衣装屋から借りたのよ」

「ん? この間、今野さんの撮影に付き合ってショーパブにいったのね」

「ショーパブ?」

「うん。飲み屋雑誌みたいなのの仕事もしてるみたいで」

「まさかショーパブの衣装?」

「ピンポン☆ 正解したけど賞品はないよ」

「欲しくはないわよ」

 佐和子はゲンナリと肩を落として、持っていた羽の内輪を閉じた。

「佐和子だって、何だか西大后みたいだよ?」

 豪勢なチャイナチック。

「……楊貴妃とお呼び」

「……うわぁ、絶世の美女と自称する?」

「……高飛車にも程があるわね」

「うん」

「否定してよ」

 それはともかく、まわりはこれぞとばかりに着飾った人がたくさん!


 ……中には雪だるまの着ぐるみもいるから、佐和子は比較的大人しい部類かも知れない。


「それにしても、これが社会人のするクリスマス会かしらね」

 壁の花を決め込む佐和子に付き合い、立食パーティーでざわめく会場を眺める。

「う~ん……。でもさ……」

 言いかけた時、会場のステージにスタスタと人が現れた。


『皆様、お忙しい中、お集まり頂き……』


 マイクから聞こえた声にあんぐりと口を開ける。
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