シャッターの向こう側。

氷原……もしくは晴天

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『あんた、今どこにいるわけ?』

 そう聞いて来た友人A、もとい佐和子。

「どこって北海道?」

 ビバ雪☆

 真っ白の世界!

 そして目の前に広がるのは、にこやか和やかな食卓風景☆


「雪ちゃん! そこの漬け物取って~」

「はぁい。漬け物ですね」

 と、漬け物の入ったボウルをおばさんに手渡す。

『漬け物? 意味が解らないわよ!』

 漬け物は漬け物だよ~?

『とにかく、あんたは何をやってるの』

「何って言われてもねぇ」

 とりあえず、リゾートホテルに着いて、写真を撮りまくったでしょ?

 出来栄えは良かったから、それをネガごと郵送で宇津木さんに送ったでしょ?

 せっかくここまで来て勿体ないかな~?

 と思って、そのまま撮影旅行に来たのはいいけど、お財布と帰りの飛行機のチケット無くしたでしょう?

 それから遭難しかけた私を見つけた近所のペンションのおじさんが、バイトと寝床を提供してくれて。

 それが一昨日。

 今はペンションのお客さんの朝食も終わり、ちょっと遅い朝ご飯。


「いろいろとあってね」

『いろいろとで済ませないで! 出張の予定は24日までだったでしょう!? 年末年始をそっちで過ごすつもりなの?』

 年末年始は飛行機が満員でね。

 なかなか空席がないんだもん。

「とりあえず、気が済んだら帰る」

『……年明けには帰るのよ』

「うん。じゃあね」

 通話を切って、事の成り行きを見守っていた夫妻に頭を下げる。

「食事中にすみません」

「いいんだけど……ご家族が心配されてなかった?」

「ああ。うちはどちらかと言うと放任なんで」

 というか、音信不通にしてるのは私なんだけど。

「お財布が見つかればねぇ」

「そうなんですけどね」

 クレジットカードはないからいいけど、キャッシュカードがあれば、お金もおろせたと思う。

 ま。

 でも、荒城さんとの仕事の方はまだたから、いいかも知れない。


「食べ終わったら薪運び手伝いますね」

「女の子なんだから、風呂洗いでもしてなさい」

 おじさんにやんわり断られた。
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