シャッターの向こう側。

新年……もしくは先輩

******





「明けましておめでとうございます☆」

 どことなくカランとした室内の、数人の同僚達が振り返る。

 その中にはしっかり宇津木さんもいた。


「……ピヨ」

「はい?」

「今日は何日の何時だ?」


 え~?

「嫌だな宇津木さん。そんな事も忘れたんですか~?」

「いや。いいから言ってみろ」

 宇津木さんは近くのファイルを取り出して、ちょっと首を傾げる。


「1月15日の19時ですよ?」

「何故、今頃年始の挨拶だ?」

「え。だって、会社に顔出すのは年明け初ですもん。どんな時でもこれで正解ですよね?」

「ならせめて、終業前に来ようと言う意思はない訳か?」

「仕方ないです。今野さんに付いて四国まで行って来たんですから。それでも空港から直で写真のプリントとネガもって来たんですよ?」

 そう言って封筒を差し出すと、宇津木さんは黙ってファイルをしまった。


 ……もしかしたら叩こうと思ってたのかも知れない。

「いいのは撮れたか?」

「まぁまぁですかね。今野さんの分も入ってますから」

「今野のは加納が担当だ。今は食事に出ている」

 宇津木さんは写真を眺めつつ、椅子ごと振り返って足を組んだ。

「……この頃は大人しいのばかりだな」

「面白いのがご所望ですか?」

「いや……そうじゃないが」

「それならOKですよね。じゃ、私は帰りますから」

「ああ……」

 宇津木さんは写真を見ながら片手を上げて、私は私で目礼してくるその他大勢に頭を下げつつ室内を出る。



 表面的には変わらない日常も、多少の変化はあるもので、会社からの仕事は今野さんと組んでの撮影が多い。

 仕事をまわして来るのは、だいたい宇津木さんか加納先輩。

 電話連絡だらけ。

 まぁ……

 半分以上は捕まりにくい今野さんのせいでもある。


 いつもなら封筒を郵送で送るんだけど、今日のは加納先輩が急ぎだからって事で届けに上がった次第。

 その張本人は居なかったけど、急ぎ仕事は相変わらず多いね、先輩は。
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