シャッターの向こう側。

変化……もしくは怪談

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 珍しく何もない火曜日。

 会社からの連絡もないし、今野さんのバイトもない。

「たまには休みなよ」と今野さんに苦笑されたのは一昨日の話だ。

「…………」

 従って今日の予定は何もない。

 会社に行ってた時は土日が休日で、一週間の洗濯しなきゃ、とか、けっこうあったはずなんだけど……

 旅行から帰ってきてすぐ、それらは終わっちゃってるからする事がない

 佐和子は仕事中だろうし……撮影に行こうか?


 でもな~……

 雨混じりの雪は寒そうかも。

 それでなくても年末はけっこうパタパタしてたし、ゆっくり休むのも手段かもしれないけど……

 一人でボンヤリするとろくな事がない。

 絶対、何か後ろ向きな事を考えそう。

「よし……っ」

 ある意味、お祖父ちゃんに怒られそうだけど、今更大掃除でも始めようか。

 と、とりあえず写真を入れた段ボールを引き出した。


 ……時に着メロ音。


 ……やろうと思った矢先に電話?

 ガックリした所で、画面の名前を見て慌てた。


「もしもし」

『お久しぶりです。荒城ですが』

「あ、はい。お久しぶりです!」

 雑誌の仕事も終わってるのに、連絡なんて珍しい。

『あははは。相変わらず元気だね』

 え。

 いやぁ。

「風邪は引いてません。それにしてもお久しぶりですね」

『ああ。神崎さんて淡泊だから』

「…………」


 そうですか?


『だいたいの子は普通、仕事が終わる前にコネを作りたがるよ』

「コネクションですか?」

『自分で言うのも変だけど、僕は善くも悪くも有名だからね』

「ああ~……」


 なるほどね。


『会社の方に連絡したら、契約社員だから普段は出社してないって言うし。そうなるとオファーは会社通さないでも個人でいい訳だよね?』

「あ、はい。個人依頼は個々の裁量になるそうです。社の方に私が話を通す形で」

『じゃ、さっそくだけど、仕事を頼んでもいいかな?』


 思わずポカンとした。
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