シャッターの向こう側。

雨降り……もしくは気がついた事

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「♪♪~♪」

 今日も元気だ、ご飯が美味しい!

 鼻歌混じりにトレイをテーブルに置き、窓際の席に座る。

 今朝の朝食は、鮭の焼き魚にワカメのお味噌汁、それからお豆腐、味海苔に白米。

 日本人に生まれてよかった~。

 と言うメニュー。

「よく朝からそんなに食えるな。お前は」

 相変わらず、ブラックコーヒーだけの宇津木さん。

「朝は食べなきゃね」

 と、言いつつ、ヨーグルトサラダだけの坂口さん。


 人を大食漢みたいに言わないでくれ。


「カメラマンは体力勝負ですからね」

 そう言って外を見ると、横殴りの雨。

「……雨降りでも無駄に元気なんだな」

 無駄には余計だ。

「いっただきま~す」

 無視して食べ始める私をよそに、男性陣は今日の予定について話し合っている。

 結局、あのあと聞いた話だと、宇津木さんは写真を媒体にする時は、スキャナーを通してメールで送った素材……

 それを使われるのが、とても好きじゃないらしい。

 最終的には、ウェブページにあげる時にスキャニングするけどね。

 昔と違って、プリンターなどもどんどん進歩しているから、画像が劣化するなんて事もないけど、二度も何かを通してしまった画像は、出来上がりが嫌なんだとか……


 細かい話ではあるけど、解らなくはないと思った。


 私もデシカメが出た当初は、確認画像でクリアな線が出なくて、嫌いだった。

 今はだいぶそんな事も無くなったけど、やはり眼で見た通りの画像が確認出来ないのは今でも慣れない。

 だから、個人的な写真については、お祖父ちゃん譲りの一眼レフを使っている訳だし。


 要は、気分の問題かな。



 小さな事なんだけど、自分のポリシーは曲げられないよね。

 だから坂口さんは室長に許可を得て、こっちに出張しに来たらしい。

 確かにウェブページの方は、チラシやパンフと違って、このホテルがオープンするのに合わせればいいから、時間はあるらしいけど……

 坂口さんは坂口さんで、待つのが嫌いらしい。


 なんてせっかちなんだ。


 ま。

 私は自分のやりたいことをしよう。

 立ち上がった瞬間、驚いた顔の坂口さんと目が合った。
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